冥冥乃志

ソフトウェア開発会社でチームマネージャをしているエンジニアの雑記。アウトプットは少なめです。

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今更ながら「子供のいない夫婦が生き生きと添い遂げるためのパターンランゲージ」について

過去記事に書いた通りAsianPLoP 2015に論文がアクセプトされたこともあり参加してきました。AsianPLoPというイベントについて感じたことなどは過去記事に書いているのでそちらを参考にしてもらうとして、今回は私が書いた論文について少し触れてみたいと思います。

mao-instantlife.hatenablog.com

パターンランゲージの理論とか理屈とかそういうものについてのエントリではないのでご注意ください。自分語りとか読みたくないよ、という人も読まない方が良いです。

なお、妻には許可を取ってない模様。まずい内容はないはずだけど。

論文は下記リンクで読んでみてください。

http://patterns-wg.fuka.info.waseda.ac.jp/asianplop/proceedings2015/AsianPLoP_2015_submission_1.pdf

なんで今更?

参加後もこのパターンを育てていきたくて、家族についての情報を集めていました。

www.nhk.or.jp

とか

考える人

とか、はたまたネットの記事とか。

自分で思ってる以上に家族の形があるんですよね。で、AsianPLoPで私が出した論文を顧みると、とんでもない領域に手を出してしまったなあ、と感じる訳です。ライフスタイルに関するパターンを書いてみた訳ですから当然ですが。大変なのがわかってやめたいかというとそうでもない。発表することに対する意義を感じていなければ、そもそも論文を出すこと自体していなかったような内容なので、このパターンはこれから育てていきたいと感じています。

そのためには一度背景に戻って、書いた意義みたいなものをもう一度掘り返した方が良かろう、というのが本エントリの趣旨です。

もっとパーソナルな背景

論文にも背景は書いてあるんですが、正直ちょっと飾っているというか、第三者的な意義を感じてもらうように考えて自分なりに整理したものです。この背景ももちろん大事なんですが、もっと根源的なエモい部分、背景の背景みたいなところを言葉にしてみたいと思います。

子供を作らないのは結婚前から決めていた

まず、大前提として私たち夫婦は「子供ができない」わけではなくて、「子供を作らないことを選択した」夫婦です。結婚前に二人で話し合って決めました。選択の理由も二人の中にはそれなりにありますが、ちょっとセンシティブなので割愛します。特に気楽な生活を求めたという訳ではありません。まあ、二人で決めるのは簡単です。その後に比べたら。

問題はこの後です。この選択をした瞬間から、夫婦の周囲は途端にめんどくさくなります。「結婚して家庭を築く」ということの中に占める子供という存在の大きいこと大きいこと。親にすら選択した内容を正しく伝えられないのですから、世間様が私たち夫婦に抱いている違和感のようなものは有形無形で感じます。

「チャイルドフリー」って言うんですね。フリーっていう言葉自体もあまりしっくりきてないので(パターン名に使わなかった理由)、自分から使うことはありませんが共働きでもないからDINKSでもないし、定義上はこれに当てはまるようです。

チャイルド・フリー - Wikipedia

で、下記ブログエントリに書かれてるような偏見みたいなもの、これは確かに存在します。

snowymoon.hateblo.jp

③の「子供を持たない人」に対する偏見あたりを読んでください。

とりあえず、結婚してから10年、ずっと思ってたことは、「選択肢の一つだよね?」ということです。珍しいかも知れませんがね。

ラブラブだよね、と言われるけど

ラブラブじゃなかったら、と思うとぞっとします。子供いないし。四六時中一緒にいて「愛してる」と心から言える人でなかったら、10年も一緒に暮らせないです。子供がいない夫婦関係なんて、紙切れ一枚で清算できるんですよ?なので「ラブラブだよね」とか言われると「ラブラブじゃなきゃ10年も夫婦できないよ」的な返しをしています。

ただ、ラブラブな状態を続ける知恵みたいなものがあって、それを二人で活用してこれたから夫婦を続けていけていると思います。夫婦という関係を二人で作る、家族になっていくための知恵みたいなものですね。血縁関係のない人間同士なんですから、勝手に家族になんてなりません。家族になれるように関係を作っていくんです。

また、二人で過ごすというのは、多分皆さんが思っている以上に気楽な部分があり、皆さんが思っている以上に途方に暮れてしまう部分があります。その差し引きをしたら、私たち夫婦が特別どちらかに振れているというわけでもなく、多分あまり変わらないと思います。その観点は少し違いますけど。

私たちがこの10年で得てきたこういう知識というのは、もう少し共有されても良いんじゃないの?と思いました。このことを表現したかったというのが、このパターンを論文としてAsianPLoPに提出した目的の一つです。

でもまあ、足りてないんですよね(苦笑。踏み込みが足りない。「ラブラブな状態を続ける知恵」という辺り、いくつかパターンの種みたいなものはあるんですけど、照れくさいというか恥ずかしくてまだ書けないやつとかあったりします。

「旅のことば」に受けた影響

内容というよりも「旅のことば」のプレスリリースです。確かSlideShareで公開されていたものを見たと記憶しているのですが、パターンを書いて発表するということに対して勇気づけられました。

www.slideshare.net

これまで共有されていなかった工夫を共有する。立場を超えて実地の知識を活用する。それを社会活動の中で活かしていく。こういうパターンランゲージのあり方を純粋に素晴らしいと思いました。

認知症とその家族のためのパターンランゲージがあるんだったら、他のライフスタイルについてのパターンももっと出てきて良い。何なら、個人が勝手に書いたパターンを書いて、それが共有されていくことで広がっていっても良いんじゃないか。そんなことを考えながら、私たち夫婦のための「旅のことば」を書いてみようと思ったのも理由の一つ。

でね、財布が軽くてまだ買えてないのです。誰か(コラ

まとめ

前の参加時のエントリには書きましたけど、私の論文の反応を見て、程度の大小はあれどもマイノリティーなんだなあ、と逆に痛感させられました。私がこういうパターンを発表することで、ダイバーシティとか大それたこと言うつもりはないけど、色んな選択肢についてもっと大らかになれば良いな、と思います。先のブログの記事ではないけど、多様な生き方を許容できる社会と選択した生き方に対して無闇に苦労しなくて良いように。

そうなってくれれば、私が自分の人生を切り売りしてパターンを書いたことも、単なる自虐ネタにならずにすむかな、と思います。まあね、多様性の問題については、私なんかが語るよりももっと説得力のあることを言ってくれる素晴らしい人たちがいます。

logmi.jp

とか

nzlife.net

とかね。

というわけで、いろんな人がパターンを通じて当たり前に生きるためのきっかけになれば良いな、と思って今回の論文を書きました。で、これがパターンランゲージという方法論が好きな最も重要な理由です。

募集

というわけで、このパターンを一緒に育ててくれる人募集しています。別に子供がいてもいなくてもかまいません。

  • パターンの種を一緒に見つけてくれる人
  • パターンの公開方法を一緒に考えてくれる人
  • 派生してライフスタイルのパターンを探してくれる人
  • etc

興味ある人はコメントなりメンションなりでアクセスいただければ、と。