冥冥乃志

ソフトウェア開発会社でチームマネージャをしているエンジニアの雑記。アウトプットは少なめです。

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あなたのお見積もりはどこから?私は設計から

私が経験してきた受託の光景を思い出しながら、一括請負のスタイルで儲けるのは難しいなあ、という話をつらつらと。話題が課題のみ散発的な感じになるので、しばらく寝かせておいたら発酵していいアイデアになるかもしれません。どうするかはチームで模索中なので、理想的なビジネスモデルまでは出てきません。

見積もり

だいたい見積もりと時期に関する相関は皆さんもこんな感じかな、と思います。みんな大好き不確実性コーン。

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で、一括請負の場合、どこかの時点で契約のための合意をとる必要があるわけですが、開発はこの時点以降のコストをコミットメントします。開発プロセスの改善は、合意したこの期間のコスト計画の最適化として作用するわけです。

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お客さまが見積もりを高いと感じる理由

この時、合意前まで動いていた分というのがあります。営業がかけた費用やら、開発の調査やら打ち合わせやら見積もりのためのお試しやら。何がしかの形でお客さまからいただかないと合意ポイント移行のコストと利益だけでは赤字です。基本的な回収戦略は「保守開発で継続的にいただく」か「単発で終わる覚悟で回収しにいくか」のどちらか(あるいはミックス)となります。

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ところが、実際にその費用を出してみると、お客さまは高いと感じることがあるようです。開発と見積もりに向けた具体的な内容の話をしている間で、おそらくお客さまにも合意ポイント移行の規模感ができているからでしょう。

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というわけで、保守開発頼みで契約を取るために合意したコストギリギリで請け負ってしまうとかも実際にはありえます。そもそも最初の契約を取らないと回らないわけですから。

見積もり精度を上げるには

ところで、見積もり精度を上げるための方策は大きく分けて下図のどちらかになります。

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具体的なやり方の話でいうと、

  • なるべく多くの目で見積もり
  • 見積もり対象およびゴールについての情報を得る
  • プロダクトについての学習を得る

となり、それぞれが案1,2に関わります。三番目なんかは、単発のプロジェクトではあまり望めないことで、保守開発としてプロダクトに継続的に関わることで得られる知見がないとやり方として成り立たないので、プロジェクト開始期には望むべくもないという感じです。

私のチームは、その上で解決方のパターンを出して選んでもらったりします。

で、残念ながら、これらの見積もり精度を上げる話は、受託の儲けの話にはあんまり寄与しないんですよね。案2とか特に。

見積もりなんか正確にできるわけがない

それは当然。ですが、お客さまの事業も年度の予算計画がある中で動いています。当然、ロードマップから大きく外れるようなことがあれば上司に説明責任が出てきます。その合意を得るプロセスが嫌なら、自社で内製するための組織を抱える方がよっぽどいいと思います。

まとめ

単純な話だけしてるので、現場の細かいところはそうじゃなかったりするし、お客さまの習慣的な話で「見積もりはただ」というところでその費用を認めてないところもあるし、個別の問題は出てきますが、総じて儲けは取りづらいというのが今までの経験です。で、何をどうすればいいか、と言うのはまだまだ模索中。そもそも一括請負やめたほうがいいよね、が理想なんですが、お客さまが乗ってきてくれるかは全く別の話だったりして悩ましい。

2016年上半期で印象に残った本

妻の入院とか人外ハンター業とか色々ハードルがあった割には数が読めたというのは評価していいかな、と思います。まあ、仕事の方向性を自覚的にするための読書を増やすために、意識的にコード書く時間を減らしているからこその読了数ではあるのですが。今まで低レベルながらも積み上げてきたプログラミングスキルを脇にやって *1 、新しい方向性に切り込んでいくので、むしろコード書いてる暇がないというか、その暇があったらプロダクトを良い方向に導いていくための勉強をしようというか、そんな不安駆動で読書に臨んでおります。

そんなバイアスがかかっているので、ノンフィクションはかなり仕事に寄ったものが印象に残っています。

ノンフィクション

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方

好きを突き詰めて行ったら誰かに勝手に発見されて、というのが如何に都合のいい幻想であるか今更言うまでもないでしょう。そもそも「今までにない仕事」というのは誰も金になると思っていないわけですから、仕事にしたいのであれば自分が売り込んでいく必要があります。

これって別にクリエイティブの領域だけじゃないと思います。以前、rebeuildfmで「アメリカは職業の体型立てがうまくて、日本人は下手」という話が出ていました。確かにその通りで、例えばプロダクトマネージャとかアジャイルコーチとか、新しい仕事を作り出して、名前をつけて、スキルセットやマインドセットを体型付けて、って日本ではあまり起きない印象です。分不相応という言葉が好きというか。

で、そういうところが同じく上半期に読んだ「Inspired」や「ぼくらの仮説が未来をつくる」にも通じているように思うのです。今の自分の仕事に対する基準となりそうな本に早いうちに出会えたというのは、かなりついていると思います。

Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方

Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方

ぼくらの仮説が世界をつくる

ぼくらの仮説が世界をつくる

リーダー論

そこらの小規模プロジェクトを率いてきたプロマネやチームリーダーの言うことよりも、あれだけ大規模なビジネスチームのリーダーをしていた人の言うことの方が信用できますね。ということに尽きると思うんですよ、この本は。このチームでAKB48というプロダクトを世に出し、ビジネスとしてあげた成果に裏打ちされた自信というか、そういうものがひしひしと伝わってきます。

ビジネス書なんだかファンブックなんだかよく分からない売り方をされたにもかかわらず、あれだけ売れたというのは、割と届く人に届いてるのではないでしょうか?今、「これからチームリーダーになろうとしてるんだけど」という若手がいたら、私は「ピープルウェア」とこの本を読んでみることを勧めます。

ただ思うのは、優秀なリーダーになるには天性のスキルが必要なのかもしれない、ということ。自分を振り返ってみると、やはりリーダーというタイプではないな、と思うわけです。

7つの習慣

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

なんだかんだ言っても、人が集まって仕事に取り組み何かをなそうとするのであれば、人間力というのは必須スキルです。シチュエーションによっては技術力より人間としてどうよ?が先に来てチームにならないとか当たり前に発生するわけです。

その「人間力とは?」という問いには、いろんな答えをする人がいるわけですが、私は現在のところこの本に書かれていることを実践しているかどうか、で見ていいと思いました。我が身を省みると恥ずかしいことばかりですが、読んでいて少しだけ安心する(ちゃんと取り組もう)と思わせてくれるのは、筆者自身も実践できないケースがあって日々戦っているということ。読者も筆者も同じ道をいく仲間であると感じることができます。

なんかボードゲームあるみたいです。

7つの習慣 ボードゲーム ?成功の鍵?

7つの習慣 ボードゲーム ?成功の鍵?

フィクション

さよなら身体

さよなら身体

さよなら身体

だいたいにおいて、短く強烈な印象を残す作品というのは説明的でないことが多いのですが、この作品もご多分にもれず。マンガでもショートショートというのかどうかよくわかりませんが、あらすじの説明すら拒否する気全開です。1ページ1ページを味わいながら読んで、感じてください。

クロニスタ 戦争人類学者

「ニルヤの島」が、私の若かりし頃の形にできなかった創作活動に対する成仏を促してくれたこともあり、今勝手に注目している作家です。今作では、どちらかというと失われるものに対する哀れみだとか、同一性の暴力だとか、もっと荒っぽい制度の話に着目して描かれています。

で、この作品、帯のアオリからして「虐殺器官」からの影響があるっぽいのですよ。

今まで立ち読みする限り、伊藤計畫って好みじゃないんですよ。。。でも伊藤計畫のトリビュートは好きな作家が書いてるし、あれだけ以前と以後でわけられる人も珍しいので、すごい作家なんだろうな、とは思ってます。こんな感じなんだったら読んでみてもいいかな、と思った作品。とりあえず、円城塔と絡んでる「死者の帝国」から読んでみますかねえ。

AIの遺電子

オムニバスっていいですよね。読みやすいし。AIやアンドロイドが市民権を持つとどのように社会が変わるのか?人の心のありように変化はあるのか?という思考実験を含んだ作品。ブラックジャックのように読めます。

SFが扱うのはテクノロジーそのものじゃないと思うんです。というかテクノロジーという意味では絶対に嘘になるわけだし。テクノロジーに対して仮説を定義し、その仮説が変えてしまう未来をシミュレーションしてみる、というのが私の好きなSFです。人間がテクノロジーで発展している以上、社会や人間のありようからもはや切り離せないものですからね。

バイナリ畑でつかまえて」は連載中から結構好きで、テクノロジーと人との間にあるものを描くのがすごく上手いなあ、と思っていたので、このテイストの作品でさらに追求してくれて良かったです。

AIの遺電子 2 (少年チャンピオン・コミックス)

AIの遺電子 2 (少年チャンピオン・コミックス)

バイナリ畑でつかまえて

バイナリ畑でつかまえて

今週のお題「わたしの本棚」

*1:全く役に立たなくなるわけではないですが

新橋会 7月度定例会議事録

各位

お疲れ様です、あべです。

下記、議事録を記載します、ご査収ください。

新橋会とは

そろそろ人生岐路に立って自分のこと以外も仕事にしなければならなくなったピュアなOSSANたちが、OSSAN特有の現実的な妥協点や泥臭い取り組みの話題で盛り上がるための会議です。飲むとふわふわして饒舌になるドリンクが必須です。

技術だけの話やゴリゴリとイノベーションを起こす様な未来に期待の持てるキラキラした話は渋谷会でしてください。

開催概要

shinbashikai.doorkeeper.jp

参加者(敬称略)

  • もじゃ変(@razon)
  • すますん(@ryosms)
  • こにしさん(@ore_public)
  • ベストストーカー(@soudai1025)
  • あべ(@mao_instantlife)

R社率6割。。。

議事録

主なトピック

あー、アジェンダのない打ち合わせなんて。。。なんだっけ?

議事メモ

  • Twitterは仮面舞踏会
  • RDBは盆栽、若人が趣味にするには早い
  • ベストストーカーが高山すぎてドン・フライが必要
  • ブッフェの場合、チョイスが腹に出る
  • 時にはポーズでもいいので怒ろう
  • コミュニティに参加しないけどポテンシャルが高い人は確かにいる
  • プロダクトへの愛情とスキルの問題
  • みんなこの先のキャリアパス決めてはないけど見据えてるよね?

他、ありましたらご指摘ください。

今後のタスク

  • 次回の定例会を決める

次回

決まったら各自に連絡しましょう。

UX Flowchart Cardsを買ってみた

Sketchは使いこなせないし、ペーパープロトをやろうにもまずわかりやすくパーツを描くことに気を取られてしまいそうです。どうしても新しいことをやってみるときには仕方のないことではありますが、もう少しアナログでテンプレート的なツールを使うことはできないかな、と感じていたところ、こんなものを見つけたので買ってみました。

UX Flowcharts | UX Cards and Useful Digital Tools for UX Planning | UX Flowchart Cards

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使ってみた

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こんな感じです。今関わってるプロダクトの新規機能の一部を仮で並べてみたものなので詳細は説明しませんが、大体の使い方はわかっていただけるかと思います。

届いてみて想定よりもかなり小さかった *1 のには驚きましたが、実際に並べてみると納得。トランプほどの大きさだと、場所を取りすぎて自分の机の上でさっとならべてみるという感じではなくなります。

また、並べながら感じたのですが、小さめの付箋でコメントやキャプションを入れながら並べていったほうがわかりやすそうですね。そうやって並べたものを写真に残しておいて、蓄積して何度も並べ直してからましなものを使う、という感じで。

まとめ

ある程度カードに描かれているテンプレートの種類を覚える必要がありますが、基本的に要求されることはテンプレートからカードを引き出して構成していくことです。私のようにSketchもまだ覚えてない、絵も綺麗に描こうとして遅くなってしまうというタイプには使い始めるまでのコストが非常に低いというところが気に入りました。カードの組み合わせから合意に至った案をSketchなりで清書すればいいわけですし。

複数人でワイワイ使うのも楽しそうですね。デザイナさんとUXの案を出す席に持ち込んで、自分でも並べてイメージを持ちながら一緒にアイデアを出すようにしたいと思います。

思いつきで買ったのですが、いい買い物でした。

*1:一般的なトランプの半分くらい

2016年6月の読書メモ

今月は結構本読むのに集中できました。この記事書きながら「AIの遺電子」の2巻が出てることを知りました。買わねば。

今月の読書量

10冊ですか。そこまで読みきった感じはなかったんですけど行きましたね。

クロニスタ 戦争人類学者

スマートフォンアプリマーケティング 現場の教科書

スマートフォンアプリマーケティング 現場の教科書

スマートフォンアプリマーケティング 現場の教科書

MdN 2016年6月号

D坂の殺人事件

AIの遺電子 1巻

7つの習慣

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

二銭銅貨

春琴抄

春琴抄

春琴抄

少ない投資で大きく儲けるデザイン戦略 視覚マーケティングのススメ

視覚マーケティングのススメ (アスカビジネス)

視覚マーケティングのススメ (アスカビジネス)

手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略

今月のベスト本

「クロニスタ」も捨てがたいんですが、自分にとってのわかりやすさという点で「手書きの戦略論」をあげたいと思います。これは後で物理で買ってもいいかも、というくらい。