冥冥乃志

ソフトウェア開発会社でチームマネージャをしているエンジニアの雑記。アウトプットは少なめです。

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今年入ってからの印象的な本

本を読んでなかったわけではないですが、読書メモの取りまとめはちょっとサボってましたね。棚卸しがてら、今月までで印象に残った本をいくつか紹介しようと思います。

今年読んだ本

抜けはかなりあるんですが、だいたいこんなところですね。ゼルダペルソナ5に時間泥棒されてた割には読めてる気がしますね。

印象的な本

フィクション/ノンフィクション取り混ぜて読んでおりますので、分けてご紹介したいと思います。

ノンフィクション系

今年に入ってから何故か言語学に関する本で印象に残ったものが多かったです。特に専門というわけではなかったですが、去年認知言語学の本を読んで、人が言葉を理解するということに純粋に興味が湧いていました。そんなタイミングで発売された本が両方とも非常にわかりやすく、より興味を刺激してくれるものだった、というのは非常に良い縁だったと思います。

ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)

ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)

働きたくないイタチと言葉がわかるロボット  人工知能から考える「人と言葉」

働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」

両者とも言語学者の方が一般向けに書かれた本です。

前者は子供が第一言語として母国語を覚えるまでに起きていることにフォーカスを当てたものです。我が家には子供がいないので、これがどれほど「あるある」なのかわかりませんが、意味も文法もわからないところから人が言語を理解する過程への考察というのが非常に刺激的な本です。

後者は厳密にいうと言語学というよりも自然言語処理のAIの説明です。物語ベースで段階を追いながら現段階で自然言語処理がどういうモデルで理解されているか、ということが書かれています。幅広い話題を扱いながら、言葉のチョイスがあくまで一般的な範囲に収められていて、相当な労力がかかっているのがわかります。

たのしいプロパガンダ (イースト新書Q)

たのしいプロパガンダ (イースト新書Q)

少し毛色を変えてこんなものを。

まあ、今のようなポジションで仕事してると、発信するということに否応無しに向き合う必要があります。これがまた難しいわけですよ。基本的に自分だけの問題ではないことはわかってるんですが、せめてもう少し楽しいものを、と思ったらやっぱりプロパガンダを参考にすべきかな、と。エンタメに混ぜるのが基本で、となった時点で仕事に直接使うことはできませんでしたが、応用を考えるきっかけにはなりました。

フィクション

フィクションはいつも通りSFですよ。ちょっと読むのをためらっていたものに手を出してみて、案の定な読書体験をしたのが印象的でしたね。

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

初イーガンですよ。いやあ、本当にこれは辛かった。小説で3ヶ月くらいかかるとかこれが初めてかもしれないです。イーガン作品の中で一番読みやすいとか本当なんですかね。。。要求される教養レベルが違いすぎる。

ただ、その知的議論の果てに見せてくれる世界が、SFというかセンスオブワンダーをちゃんと感じさせてくれて、読後感は素晴らしいものでした。人間の好奇心が行き着く先をみたければこの作品はおすすめです。

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

ここ数年は海外SFもちゃんと読もうと思って手に取っていますが、もともと日本SFを中心に読んでいたというのもあって、ファーストコンタクトものの中でも古典に入るこの作品も読んでなかったわけなんです。しかも、クラークの作品ともあって結構ハードSFなのかなあ、と思ってたんですが、そうでもないというのが意外でした。「正解するカド」に求めていたのは、ディアスポラの行き着く先だったりこの作品のラストだったりしたのだなあ、と認識させてくれた作品。訳も読みやすかったです。

大四国戦線

大四国戦線

事態にふさわしいとは思えない卑近な登場人物の応酬や、大四国と銘打っておきながら高知と徳島は我関せずという看板の偽りっぷり、筒井康隆フォロアーとしか思えないラストに至るパイ投げエスカレーション、どれをとっても180kmのナックルという感じの怪作でした。こんなのまともなキャッチャーとれねーよ。こういうのがいるから面白い、というKDPの真髄を見た、という感じ。おすすめはしませんが、同じカルマを感じる人だったら紹介する、という本です。

ラノベ、普段読まないんです。理由は主に文体で、改行が総じて多すぎるというのが一番強い理由ですね。私は改行をカット割りのように捉えて読んでいるので、あんなに開業されると無駄なカットが多すぎてうるさい映画のように感じてしまいます。

それでもこれを読み始めたのは最新刊の帯に円城塔が推薦文を書いてたから。まあ、この人が帯書いてる時点で普通の作品ではないはずなので、その期待を込めて、ですね。

1巻ではまだ、異能バトルものみたいな感じですが、ちょいちょい怪しい仕掛けとかもあって、先が楽しみです。しばらく追いかけてみようと思っています。

この作品、好きなんですが、いろんな感情をむき出しで描いていて感想をいうのが難しいんですよね。一つの町が隔離されて消えるまでに起こる様々なことをオムニバスで描いています。その中で示される感情も決して一つじゃない、何か入り混じった複雑な感じで味わい深い読後感があります。ラストの含みが特に好きで、あれをシーンとして描き切らなかったのはいいですね。一応おまけ漫画と最終巻の表紙でどうなったかはわかるのですが、一応ハッピーエンドでよかったです。