冥冥乃志

ソフトウェア開発会社でチームマネージャをしているエンジニアの雑記。アウトプットは少なめです。

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「正解するカド」のストライクっぷりが半端なかったので、少し語ってみる

最近ご無沙汰してましたね、と思ったらアニメの話題ですか、そうですか。

あまり期待せずに見始めたアニメが好みどストライクで、あまりに嬉しくて語ってしまおうというアレです。まだ終わってないんで、これからしぼんでしまうと寂しいですが、最近はこれと「あげくの果てのカノン」と「クジラの子らは砂上に歌う」を楽しみに生きているくらいにははまってます。

seikaisuru-kado.com

Amazon Primeビデオでも配信されています。是非。

どんな話?

所謂ファーストコンタクトものです。異世界からきた「カド」と「ヤハクィザシュニナ」とのコンタクト、およびそこからもたらされるものに人類はどう対峙するのか、というのがあらすじになります。

この手の話って、ビジュアル的に一番派手なシーンというかクライマックスが最初に固まってしまうんですよね。なので、現状6話まで進んでますが、これ以上に派手なシーンが今後あるのかと言われるともしかしたら、の可能性はあります。おそらく最後くらいではないかな、と。

もちろんこの作品の面白さはそこではない(言い過ぎ)なので、その分ストーリーが重要なわけです。重要なテーマは「異文化コミュニケーション」。描き方には重点によって幾つかのパターンがあって、

  • 成立するまでの過程に重点を置くもの
  • 結果がもたらすものに重点を置くもの

が大別ですかね。

両者とも、異文化コミュニケーションを通じて、今人間が抱えている文化の形を明らかにして、可能性を探る文学として成立するわけですが、描写の内容が異なります。

前者は、まったく対話が成立していない状態からスタートして、言語学とか社会学とかをベースにした話が多いです。自然言語の文法が何に由来して、どういうコミュニケーションになっているか、というのが密に描かれてる印象があります。

後者は、言語での対話そのものは成立しているが、寄って立つ文化や精神性などの違いに触れて、という描写が多いですね。なお、不成立によってもたらされる不幸を含みます。イデオンみたいに。

で、本作品は後者。何がしかの未知の力によって(ロスはありつつ)コミュニケーションの成立過程についてはサクッと流しています。ただ、この描写も後々重要になるんじゃないかなあ、という感じになってて、ちょっとした伏線の回収具合に注目です。

どこが好きなの?

まあ、すげー曖昧なんですが「俺の好きなSFしてる」ということころですね。

小松左京のファンなんですが、彼の大作に多い「科学の発達によってもたらされる人類のあり方の変容」を描くSFというのが特に大好きなんです。そういう意味で「華竜の宮」も好きなわけで。

ところがね、こういう作品ってたいてい映像にした時の派手さにかける、新しい概念に挑戦する分抽象的な表現が多い、などなどの理由でなかなかメディアや人を選んでしまうような気がしていて、なかなか作品として目立たない。この「正解するカド」は、そこに真っ向から向かっている感じがしてすごく好きなんですよ。今の所、第1話の「カド」出現シーンと「それ必要?」な2回目の砲撃シーン以外は派手なシーンありません。「カド」や「ワム」は今の世界の有り様を変革する可能性がある、という事実に対して各登場人物がそれにどう対峙するか、を描くことが中心です。

それが顕著なのが、作品内で、ワムの作り方を公開してパワーバランスを崩すこと決める際の犬束首相のセリフですよ。

しかし、我々は想像出来る筈だ

「我々」ってのもいいですし、「想像できるはずだ」ってのも最高です。私の好きなSFはこういうシミュレーションなんだよ、という感じ。ってか、キャラデザはともかくとして、政治家がかっこいいです。

まだまだ考える楽しみがある

第5話で物語に対して爆弾が投下されたタイミング。まだまだ伏線の回収はされていませんし、面白くなるのはこれから、という感じです。

一番気になってるのは「正解」という言葉ですね。タイトルにもなっていて、使われる頻度も高いこの言葉ですが、そもそも意味の捉え方が違うんじゃないの?とか思ってしまいます。

それに我々が普段行っている言語コミュニケーション自体のロス具合ってどうなんよ?とか。まだちゃんと明らかになっていない、理由もちょっと曖昧な「ユノクル」という概念は、この伝達ロスに関することではないかと思ったり。

あと、キャッチコピーにあった「世界の終わり」要素がまだ見当たらないんですが、どういうことですかね?日本の孤立とパワーバランスの混乱?

などなど、考える材料としては面白いものが揃ってる作品です。よくもまあ、こんな派手さのない良作を作ったな、という。しぼまなければかなりの傑作になりそうな気がします。

というわけで、これからどこに向かって物語が着地するのか楽しみな作品です。みんな見よう。