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冥冥乃志

ソフトウェア開発会社でチームマネージャをしているエンジニアの雑記。アウトプットは少なめです。

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「72時間」が好きすぎる話

ポエム。

ご存知ですか?「ドキュメント 72時間」。

www4.nhk.or.jp

毎回特定の箇所に72時間カメラを構えて、そこに行き来する人を定点観測するドキュメンタリー番組です。非常に淡々とした作りで画面的な変化は乏しいのですが、その分丁寧に取材していると感じます。何かね、沁みるんです。

で、好きだから見続けているというのもあるんですけど、この番組を見ることで学びも色々あるな、と。知的好奇心を満たすような学びではありません。仕事に対して直接利益をもたらすような学びでもありません。感情的なものとも少し違うんで、ちょっと自分ではカテゴライズしづらいものを学んでる気がします。意識高い高いするのも恥ずかしいので、とりあえずこのドキュメンタリーのどこが好きかを語っておくことにします。

余談ですが、72時間見てたら「99人の最終電車」を思い出します。

ドラマの切り取り方が良い

他のドキュメンタリーはドラマを固定して、場所と人と時間はフレキシブルなのだと思いますが、72時間では場所と時間が固定です。そのため、他のドキュメンタリーであれば最後まで追いかけるであろうドラマに結末が提示されないということもあります。その場所から離れた場所でこれから起こるドラマがどうなるのか、それぞれの人のドラマがどうなるのかは、視聴者が想像するしかないのです。

しかも、そこに来る人にドラマ性がない訳でもない。カメラを構える場所は目的を持って人が来る場所です。その目的だけでもドラマとして成立する場合もあれば、それぞれの人が抱えている動機の部分に強いドラマ性があったりする。その結末を見せてくれないというのは、ある種のフラストレーションにつながるのですが、同時に妄想をかき立てられます。そして、なぜかこの番組で見ていると、その妄想はハッピーエンドに落ち着くので心地よいのです。

エンディングテーマが良い

松崎ナオの「川べりの家」という曲です。別に単体で聴いてピンとくる曲ではないんですが、この番組でスタッフロール前後でエンディングテーマが流れてくると胸が詰まるものがあります。音楽の価値って、シチュエーションまで含めた個人的な体験だよなあ、と強く感じさせてくれる経験です。歌詞がまた番組の内容に合ってて良いのです。この番組のために書き下ろした曲じゃないかってくらい。

川べりの家

川べりの家

また、これ1曲フルで毎回流れるんですけど、曲の最後がピアノの低音がちょっと硬質にどーんと響いて余韻で終わるんですけど、この余韻の響き方と最後のカットが毎回良い。音の余韻でその後の時間を想像させるというか。なによりこのピアノの音自体が好み。

「そりゃ色々あるよ」

「そりゃ色々あるよ」という当たり前のことを可視化してくれます。共感できる、できないの違いはありますが、それはもう多種多様に(編集でそうなるようにピックアップしてるとは思いますが)。人が集まる場所には必ずそれぞれの背景があるんですけど、自分が当事者の場合、他の人たちは自分の事情に関わらない他人になるのでそのことを考えない。こういうドキュメンタリーにして引いて見ることで、それを実感を持って見ることができている気がします。

また、自分が今まで知らなかった事情を知れば、よりお互いにとって良い感情で接することができるかも知れない、と思わせてくれます。

例えば、カプセルホテルを取材した回で、歩くのが不自由な方が泊まりにきていました。多分、私が同じ場にいる宿泊客だったらあまり事情も考えずに「体が悪いのに大丈夫かな」くらいで、それ以上の気もとめないように思います。ただ、その方は病気をして半身不随になったけど、リハビリして少し体が動くようになったから一人で遠出をチャレンジしてみたかった、ということでした。

別の例を上げると、高尾山の回で山頂で休んでいたカップル。いかにも幸せそうな雰囲気で「爆発しろ」と言いたくなるんですが、二人はまだつきあってもない。女の子は聾者で、男の子は彼女と話してみたくて手話を覚えてやっと2回目のデート。聴くのも話すのもスピードについていくのがやっとで、伝わってるかどうか不安になりながら手話で話している、ということでした。

まだまだ、実例はあるんですが、そこまで事情があることがわかると、今度は応援したい気持ちになるんですよね。

ダイバーシティうんたらとはまた別の次元で、社会は既に多様である、ということを想像するきっかけになったかも知れません。

作為的でない言葉だけに刺さることがある

インタビューする相手はだいたい素人さんなので、言葉に村上春樹の様な作為性はありません。まあ、リアルにああいう言い回しされるとイラっとくるので、なくて良いんですが。でも、作為性がなくてシンプルな言葉で自身を語ってくれるので、たまに刺さる言葉があります。

六本木のケバブ屋さんの回では土地柄取材対象に外国人が多かったのですが、インタビューした内の一人にレバノンから来た女性二人組がいました。彼女たちは「テロもあるし、自分たちの国は危ない。死ぬなら平和な日本で死にたい」と言います。みんな自国のことは好きだと思うんですけど、この言葉を言わせてしまうだけの背景を考えると刺さってきます。

高尾山の回でインタビューを受けていたおばあちゃんの「悩み事はお山が吸収してくれる」っていう言葉も良かったですね。ぱっとみほっこりする言葉なんですが、それまでの諸々を飲み込んだ後の言葉であることが、この短い言葉の中に垣間見えます。

こういう言葉に出会うことも、この番組を見る楽しみでもあります。

まとめ

知的好奇心でも馬鹿みたいに笑うわけでもない番組なんですが、独特の魅力があるいい番組です。単にほっこりするもよし、自分に重ね合わせてがんばろうと思うもよし、見方を強要しないので、それぞれに楽しめます。一度だまされたと思ってご覧になってみてくださいな。

あ、受信料はちゃんと払ってるので、いちいち面倒くさい質問は投げないでくださいね(はあと。