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冥冥乃志

ソフトウェア開発会社でチームマネージャをしているエンジニアの雑記。アウトプットは少なめです。

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認知言語学という面白そうな分野があるらしい

大学時代に「誰のためのデザイン?」にやられて認知なんちゃらという言葉にめっきり弱くなってしまった(好物とも言う)私ですが、先日参加したギー岡ゆるのみをきっかけにまた面白そうな分野を知ることができたので現時点での理解をまとめてみます。素人理解なので指摘訂正大歓迎。というか正確な理解なんて無理ゲーです。

なお、純然たる興味(好奇心)なので、現時点で何かに役立つとか何かを作るとか何にも考えていません。それと、かなり多岐にわたる知識を必要とするので、説明が飽和しそうなものは適宜Wikipediaのリンクを注釈に貼っておきます。

言語学について話を聴いてみたかった

ギー岡に言語学専攻の人がいるというのは知っていたので、ゆるのみの時に是非とも話を聴いておこうと思ってました。そもそも、今まで言語学に触れる機会がなかったので「言語学のどこが面白いか」を教えてもらって、興味を引くものであれば本を紹介してもらおうかと。言葉が対象ということで、パターンランゲージの理解をより深めることにもつながるのではないかとも考えました。酔ってて細かいところは覚えていませんが、方言の話とかパターンの話とかしていた気がします。

で、その場で教えてもらって借りたのが「言語学の教室」という本でした。読んでみるとこれが、ノーマンかぶれな私にはぴったりの本だったのです。今回のまとめは、この本の内容をベースにしています。

認知言語学

言語学の教室」で扱うのは「認知言語学」と呼ばれる比較的新しい学問です。言語習得や言語使用を可能にしている知識のあり方を認知の枠組みの一環として捉えようとする立場です。この知識のあり方には、文法や構文の言語そのものの機能だけではなく、文化や認知の癖も含まれます。

認知言語学 - Wikipedia

本書は、初学者がこの認知言語学で扱う問題の全体像について理解できることを主要な目的としています*1。対談形式となっており、認知言語学西村義樹氏を先生役にして生徒役の哲学者野矢茂樹氏が質問をしたり、問題提起をしながら認知言語学を学びます。

扱われたトピック

問題の全体像を掴むことが目的なので、本の薄さからは想像ができないくらいトピックが多岐にわたっています。その中から特に面白かったトピックについてまとめてみます。

言語学の歴史

本書を読んで間違いだと知ったのが、近代言語学の基礎を作ったのがソシュールだということ。大学時代に筒井康隆の「文学部唯野教授」からポスト構造主義に関する本を読んで、てっきり思想の分野の人だとばかり思っていたので、今更ながら正しい知識を知ることができて良かったです。というか、未だにポスト構造主義構造主義がなんだかわかっていませんが。。。

その後、生成文法という流れが出てきたのですが、この分野は言語機能としての文法を文化や認知の癖、共時的な意味などを含む事象から分離して扱おうとしていました。この生成文法で有名なのはノーム・チョムスキーという学者。チョムスキー階層を発表してコンピュータ言語にも影響を与えています。

チョムスキー階層 - Wikipedia

生成文法に対して、これらは「人が言語機能を獲得し扱う上で不可分ではないか」という立場で言語をとらえ始めたのが認知言語学ということです。ただし、対立する学問という考え方ではなく、生成文法だけでは説明できない言語活動にもモデルを作っていこう、という解釈が近いと理解しました。

基本的に学問として成立した分野なので、この本に載っているレベルでは理解することは不可能でしょう。今の私では何を書いても正しい記述にはならない気がします。

文法

本書の中で説明されていた文法の構成は下図のようになります。

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一番大枠が広義の文法で、言語使用を可能にする知識全体です。この知識全体は、語彙と語彙をつなぐパターンの知識との構成に分割することができ、後者が狭義の文法となります。

語彙とは語彙項目の集合で、語彙項目は形式と意味がセットとなる最小単位をさします。なお、この形式は言語でコミュニケーションする際の形式のことで、発話、手話、綴りなど送受信のメディアによって異なります。なお、この語彙項目には単語だけではなく、イディオムも意味との最小セットになるのであれば含まれるのだそうです。何かマトリョーシカみたいな入れ子状況を想像してしまいました。定義の境界が曖昧になりそうですが大丈夫なのでしょうか?

そして狭義の文法ですが、この知識に中には語彙項目をつなぐパターンとその構成要素を含みます。構成要素には名詞などパターン上で担う役割*2を含んでおり、これらを文法項目とよびます。

カテゴリー化

プロトタイプ理論*3をベースにした考え方で、典型事例と類似性を元にした概念の捉え方と分類の認知モデルと理解しています。認知にとって非常に重要な機能となります。

カテゴリ化で重要な部分は、概念の形成において関連と全体が主体であるということです。部分を取り出してもカテゴリとしては認識されないという特徴があります。「らしさ」として全体性の中で生み出され、類似性のグラデーションを形成します。アレグザンダーの言う「名付けえぬ質」がパターンの集合で表され、各パターンのみ取り出しても全体が見えないのに似ています。

なお、このプロトタイプに含まれる範囲は文化で異なります。

メトニミー

私の脳内では何度訂正しても「メニトミー」と発音されてしまうこの単語、換喩のことです。例えば「赤ずきん」のように道具や身につけているものがその人をさすように使われる表現方法をさします。換喩で使われる単語が、指し示される対象と密接な関係にあることを示している表現です。省略ととらえられるケースもありますが、文脈を共有していないと何の省略かわからないことが特徴です。

認知言語学の立場では、メトニミーの基盤に言語に特化されない認知能力があると考えていて、その能力を参照点能力と言います。そのものでは参照しづらいものを参照するために、近くにある参照しやすいものを使って認知する能力です。

メタファー

暗喩のことです。メタファーって受け手の語彙力とか国語レベルに依存してしまう気がして、最近使うのが難しくなってる気がするんですよね(暴言。カテゴリー化の原理となる概念の体系がメタファーと紐づいているのではないかと提案しています。

また、メトニミーにもメタファーにも創造性が関連し、野矢氏はその創造性を「文法や意味の規則だけではその文が構築できない物に対して働く力」と定義しています。本書のこの辺り、野矢氏の議論の持ちかけ方が人間の創造性を神聖視しすぎている感じがして、私自身は読んでいてちょっと納得しかねたところもありました*4

ノーマンかぶれの感想

というかKindle版があるじゃないか、今回は借りて読みましたが自分用に買っても良い本かも、と思っています。それくらい面白いと感じる本でした。

言語の変化はモデル化しないの?

認知言語学というよりは社会学とか文化人類学とかに入ってしまうのかもしれませんが、本書では「言語は変化するもの」という事実は前提として使っているだけで、そこに踏み込んではいないようです。認知言語学自体がここに踏み込まないのか、それとも本書で扱う容量を超えていたのかわかりませんが、意味の認知にどこかでずれが生じるはずなのでこの変化の部分はモデル化しないのかな、と感じました。

認知心理学と同じルーツ

本書では触れられていませんでしたが、認知言語学ゲシュタルト心理学*5がベースになっている部分があります。ノーマンかぶれからすると、このあたり考え方の親和性が非常に高くて、理解の助けになっている部分がかなりありました。

ただ、認知言語学はフォーカスしている箇所が違うように思います。「どのように世界を認知しているかを解明」するというよりは、「ある認知モデルが仮定できる場合に言語の構造はこうなるはずだ」というフォーカスのあて方をしている感じです。

直感的に近いと思ったこと

まだ整理していないんですが、本書を読んでいて何となく似ているな、と思ったことが幾つかありました。他の本を読んでみて、関連知識が蓄積されてくるとまた類似性に気づくかもしれませんが、とりあえずリストアップまで。酔うとこのあたりのことを語りだすかも知れないので、適当に流してやってください。

特にパターンランゲージについては、パターンとシーケンスの言語化によって限定されたコンテキスト内での認知を顕在化させている活動ではないかと妄想するに至っています。

*1:問題についての理解ではないことに注意

*2:この役割のことを「スキマスティックな意味」と呼ぶようです

*3:プロトタイプ理論 - Wikipedia

*4:そもそも創造性って無から有を生み出すことだっけ?という話

*5:ゲシュタルト心理学 - Wikipedia