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冥冥乃志

ソフトウェア開発会社でチームマネージャをしているエンジニアの雑記。アウトプットは少なめです。

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誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

設計とかデザインとかそんな仕事に携わっている人は、一度は目を通しておいた方が良い名著です。設計者・デザイナーにとっては「たしなみ」と言っても良いかもしれません。
私は大学3年生のころに認知心理学のサブテキストとして出会い、講義そっちのけでサブテキストを読んでいました。書かれてある内容に一々納得し、設計・デザインとはこうあるべきなのだ、と目を開かされた記憶があります。それ以来、節目節目で読み返しています。

構成

本書は日常の道具のユーザーインターフェースについて考察し、人間の思考モデルから良いデザインの原則を論じます。
悪いインターフェースの見本として頻繁に槍玉に上がるのは電話です。それはもう、どれだけ恨みがあるんだと突っ込みたいくらい頻繁に槍玉に。ちなみに、次点はドア。やはりよく利用するものに関しては考察すべきことが多いようです。

人の認知モデル

著者はヒューマンエラーが発生する原因としてシステムのインターフェースが人の認知モデルと合致していない事をあげています。
人が行為遂行する場合のサイクルは以下のように定義されています。

  1. ゴールの形成
  2. 意図の形成
  3. 行為の詳細化
  4. 行為の実行
  5. 外界の状況の知覚
  6. 外界の状況の解釈
  7. 結果の評価

2〜4でシステムに対してインプットをおこない、5〜7でアウトプットを解釈して1で想像したゴールと比較します。
そして、インプットとアウトプットがユーザーのもっているモデルと異なる場合、その隔たりがヒューマンエラーを引き起こす原因になると述べています。

デザインの原則

では、人の認知モデルに隔たりを生じさせないインターフェイスをデザインするにはどうすれば良いのでしょうか?
著者はその答えとして、デザインには以下の原則があると述べています。

  • 可視性を高く
  • 自然な対応付け
  • 良い概念モデルを提供する
  • ユーザにフィードバックする

この原則が目指すところは、マニュアルがなくても迷う事なく操作できるインターフェイスです。設計者やデザイナーに対して「ユーザー中心のデザインをしよう」と強く主張しているのです。

最後に

ただし、この本で書かれていることは、原論、あくまでも原理原則なので、この本を読んだだけで良いデザインができるスキルが身につくようには書かれていません。「画面にどのようにコントロールを配置すれば良いのか?」という具体的なデザインの仕方はこの本の範疇ではありません。そういうものを求めている人は、アップルのヒューマンインターフェイスガイドラインなど、それに類するもっと実際に即したものを読んだ方が良いでしょう。それよりももっと前段階の話なのです。
いつでも立ち返ることができる原理原則なので、常に手許に置いて、忘れかけた頃に読み返す。そんな使い方をする本だと思います。